「健忘症」と「認知症」
 考える力や判断力があり、日常の生活には支障のない「健忘症」と、今日が何日なのか、自分がどこにいるのかわからない、などの見当識に障害が現れる「認知症」(アルツハイマー型、脳血管性型など)とは別のものです。
「健忘症」は、脳の神経細胞に栄養を送る毛細血管が何ヶ所も詰まり、詰まった先の脳細胞が死んでしまうことが原因で脳の働きが低下して起こります。症状が段階的に進むために、脳の働きが、ある部分ではしっかりしているなど、まだら状に症状が現れます。
「認知症」は、脳全体が萎縮することで起こります。女性は更年期以降に多く現れますが、これは女性ホルモンの喪失によって、脳細胞の保護効果が失われることと関係が深いと考えられています。
神経伝達をスムーズに
 脳の中には、140億個の神経細胞(ニューロン)がつながっており、数千億個の脳神経細胞間の連結(シナプス)があります。さまざまな脳の記憶を呼び出すためには、神経細胞と神経細胞の間を信号がうまく伝わらなければなりません。信号のやりとりをスムーズにするためには、神経伝達物質(ドーバミンなど)や、脳細胞膜を含む脳細胞の生成に必要な栄養素を、充分に摂りいれることが重要です。
特に、神経の再生を促すビタミンB6や、細胞膜の構成要素であるリン脂質のホスファチジルセリンやレシチン、抗酸化作用のあるポリフェノール類を摂ることをおすすめします。
『どのような油を栄養として摂るか』で、細胞膜の中のリン脂質成分が変わってきますので、例えば、ラードのような油を多く食べれば、細胞膜は硬くなり、魚の油(DHA)を食べると流動性のある柔らかい、機能的な細胞膜になります。
脳の中の電気信号
 脳の細胞は、シナプスと呼ばれる神経回路によって他の細胞とつながり、電気信号のやり取りをしています。脳の中で電気信号、というと少し不思議な感じがしますが、実際には、細胞膜の内側と外側の、イオンの変化によって生まれる電気信号のことで、この信号のやり取りの集合体が「思考」です。
そして、記憶力や頭の回転の速さは、このシナプスのつながる密度と、シナプスのつながり方に関係があります。人間は、経験することによって神経細胞同士がつながり、何回も同じ経験をすると、神経に電気信号が流れやすくなります。つまり、繰り返すことで作業が早くなり、記憶も長続きします。
細胞と細胞の間にあるシナプスですが、神経伝達物質(アセチルコリン、セロトニン、ギャバなど)をシナプスに放出する際にも、また受け取る際にも、細胞膜を通らなければなりません。ですから、細胞膜を若々しく保つことは、神経伝達をスムーズするためにとても重要です。
脳の細胞膜の材料である「ホスファチジルセリン」
 ホスファチジルセリン(PS)は、水溶性と油溶性の両方の性質を持つ、リン脂質の一種です。リン脂質は、卵黄や大豆から抽出・分離して得られる「レシチン」が有名ですが、生物の細胞膜を構成する重要な成分です。
この細胞膜を構成する全リン脂質のうち、約3%はホスファチジルセリンですが、とりわけ、脳の神経細胞膜においては、10%前後ものホスファチジルセリンが存在しています。このように、脳の神経細胞には、ホスファチジルセリンが集中していますから、ホスファチジルセリンは、脳機能に影響をおよぼす構成要素ということができます。
加齢により、脳内のホスファチジルセリンは少しずつ減っていきますので、やがて脳に「かすみ」がかかったような状態となり、記憶力、判断力、注意力が衰えていきます。この脳の機能が低下した状態を、いわゆる「老化」と呼びますが、補助食品を摂って、ホスファチジルセリンを補うことで、脳の「老化」のスピードをゆるめることができます。
ホスファチジルセリンは、一般の食品には極微量にしか存在しないため、食事から十分量を摂取することは、大変難しいとされています。近年、大豆を原料とした、高純度の植物性ホスファチジルセリンを作り出すことが可能になり、摂りやすくなりました。
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